こんにちは!
今回は、物質が様々に変化する「化学反応」を形に表すための「化学反応式」を書く方法について考えてみたいと思います。
高校の教科書には、化学反応式を書くために「未定係数法」という方法が取り上げられていますが、数式が用いられたり、難しい用語が出てくると抵抗を感じる場合も多いと思うので、極力丁寧に説明していこうと思います!
ルールさえわかれば化学反応式を書くことに抵抗が無くなりますし、入試では得点源にもなるので、是非基礎からマスターしてください!
化学反応とは?
いきなり、化学反応式の書き方とは?と本題をぶち込んでも良いのですが、化学は難しい言葉が沢山あるので、
「化学反応」ってそもそも何?
と感じるかもしれません。化学反応に対してイメージが膨らむと、反応式も書きやすくなるので、まずは「化学反応」という言葉について詳しく見ていきます。
物質とは?
化学反応という言葉に触れる前準備として、「物質」という言葉についておさらいをしておきましょう。
前回の投稿で、物質とは、分子やイオンが集まることで、色やにおい、融点や沸点などの特徴が表れているモノであるということに触れました。
つまり、物質が何であるか(≒物質がどんな特徴を持つか)は、
- 分子でつくられた物質の場合は、分子の種類
- イオンでつくられた物質の場合は、集まるイオンの種類
によって決まります。
化学反応とは、物質が変化すること
以上のことを頭において、化学反応という言葉について考えてみましょう。
化学反応(化学変化)とは、この物質の全体もしくは一部が、別の物質に変わってしまうことを指します。物質が違う物質に変わってしまうため、化学反応が起こると、モノの特徴が変わります。
結合が切れたり、新しい結合を作るときに、物質が変化する
では、どのようなときに、物質が別の物質に変化してしまうかを考えてみましょう。
分子でつくられた物質は、その分子の種類(=分子が何か)で物質が何か決まります。この物質が変化するということは、分子が別の分子に変わるときに物質が変わるということになります。
分子は原子同士の共有結合で出来たかたまりなので、原子同士の共有結合が切れたり、別の共有結合が作られたりしたときに、新しい分子ができ、物質が変化する、すなわち化学反応が起きるということになります。
イオンでつくられた物質の場合も同様に考えられます。集まるイオンの種類(=イオンが何か)で物質が何か決まるため、物質が変化するときには、集まるイオンの種類が変わるということです。
イオン同士はイオン結合により集まっているので、このイオン結合が切れたり、別のイオン結合が作られたりしたときに、物質が変化し、化学反応が起きるということになります。
また、その他に、金属は金属結合を作りますが、これも自由電子を介して金属イオンが積み重なった構造(イオン結晶に近い構造)を取っています。そのため、この金属結合が切れて別の結合ができるときにも、新しい物質ができます。
すなわち、化学反応が起きるときには、ガッチリと結び合っていた共有結合やイオン結合、金属結合が切れたり、新しい結合を作ったりするということになります。
化学反応はエネルギーの変化が大きい
せっかくなので、化学反応も恋愛に例えてみましょう。
例えば、今までずっとラブラブだった恋人の元を離れて、新しいパートナーを探しに行くことは簡単ではありませんよね。恋人に対する罪悪感や、自分がこれから1人になるかもしれない不安を押しのけて、別れを告げて旅に出るためには、相当な勇気とエネルギーが必要です。
化学反応も同じように、今までガッチリくっついていた相手との結合を切って、新しい相手と結合をしなくてはいけないので、原子やイオンにとっても大きな変化になります。
その分、状態変化とは異なる点として
- 温度変化(加熱)だけでは進まない反応もある。光の刺激や触媒が必要な場合も多い。すなわち、状態変化よりも簡単には起きない。
- エネルギーの変化(熱の出入り)が大きい場合が多く、物質の見た目も大きく変わってしまう場合が多い。
化学反応とは、原子やイオンが今までのパートナーを手放して結合を切ったり、新たなパートナーと付き合って結合を作る、大きな出来事と覚えておきましょう!
化学反応の例
世の中には様々な物質が多数存在しているので、その分化学反応の数も大量に存在します。そのため、全部を覚えよう!と意気込む必要は全く無いので、安心してください。笑
まずは、これは反応しやすそうだな、しにくそうだな、というイメージを少しずつつけていきましょう!
身近な例でわかりやすい化学反応のひとつに、金属の酸化があります。
純粋な金属の単体は、金属結合を作ります。金属と言えばピカピカした金属光沢があるイメージですね。
しかし、これが空気中の酸素と結合を作ってしまうと、新しくできた物質はすでに単体の金属ではなく、金属と酸素で出来た化合物になってしまいます。金属でなくなったため光沢はなくなり錆びついてしまうことからもわかるように、単体から化合物に変化し、物質が変わってしまうと、見た目の特徴も大きく変わってしまうことがわかります。
化学反応式について
化学反応の1つ1つについて完璧に理解しようとすると、物凄く時間が掛かります。反応が起こる理由、反応の速度、熱の出入りなど…高校の化学の授業で全てをマスターするのは不可能です。
そこで、化学反応を知るための第一歩として、「化学反応式」があると考えてください。化学反応式が書けるだけでは、化学反応のスペシャリストになれるわけではありません。しかし、化学反応式は、化学反応に必要な要点がコンパクトにまとめられている優れものです。理解し、書くことができればノートも綺麗にまとまりますし、計算問題を解くときにも必ず必要になります。
化学反応式に含まれる情報とは?
まず、化学反応式を書くことで、何がわかるようになるか?をはっきりさせておきましょう。テストの問題で課されるから書くのではなく、書く目的や得られるメリットが沢山あるという意識を持てるといいなと思います!
- 反応前と反応後で何がどう変わったかが一目でわかる!
反応前の物質(材料)を「反応物」、反応後の物質(完成品)を「生成物」と呼びます。反応物と生成物を文字で示すだけでは、変化のイメージが難しかったりします。例えば
「水酸化マグネシウム」を高温で熱したら、「酸化マグネシウム」になります!
と言われても、何が変わったか解りづらいですよね。しかし、以下のような化学反応式
\(Mg(OH)_2 → MgO + H_2O \)
と書いてみると、水酸化マグネシウムから、水が取れたんだな、というイメージがすぐにできます。
化学式は難しいイメージがありますが、言葉よりも化学式で示したほうが、どこが変化したかすぐにわかるようになります!
- 反応物と生成物の個数の関係がすぐわかる!
化学反応式をルールに従って書くことができれば、反応の前後で分子の個数が増えたり減ったりしてもすぐにわかります。分子の個数が解れば、分子量などのモル質量を使って、生成物それぞれがどのくらいの重さになるか計算することもできます。言葉だけでは原子や分子が何個反応しているかわかりづらいのですが、化学反応式を書くことができれば一目でわかるようになります!
- 似た(同じ種類の)反応の化学反応式は書き方が同じなので、暗記する化学反応の量が減る!
化学反応の数は膨大に存在しますが、「酸と塩基の反応」「酸化還元反応」「燃焼反応」など、いくつかの反応の種類に分類することができるものが多いです。同じ種類の反応は化学反応式の書き方も同じなので、反応物と生成物を1:1で全て言葉で暗記しなくても、書き方を1つ覚えれば生成物を導くことができるようになります。
逆に、反応の種類がわからなくても、生成物と反応物を見ただけで、反応の種類を推測することができます。
つまり、化学反応式の書き方をマスターすれば、覚える量が格段に減るという素晴らしいメリットがあります。
化学反応式の書き方
では、最後に、実際に化学反応式のルールを理解しながら、化学反応式の書き方を学んでいきましょう!
化学反応式のルール
化学反応が起こるときには、結合が切れたり、新たな結合ができます。つまり、原子をレゴブロックのピースに例えると、ピースの組み立て方が変わるということになります。
しかし、組み立て方が変わったからと言って、ピースの数が変わったり、消滅したり増えたりすることはありません。
化学反応が起こっても、組み立てに使われる原子(ピース)の数は変わらないということが大切なルールになります。
また、ピースの数が変わらないので、反応物と生成物のトータルの重さも変わらないはずです。質量が反応の前後で変化しないので、これは「質量保存の法則」と呼ばれています。
書き方の手順
書き方は主に2つのステップに分けて考えることができます。
- 反応物を矢印の左辺に、生成物を矢印の右辺に、化学式で書く。
まず、化学反応式を自力で書けるようになるためには、
- 反応の前後で、何が何に変わるか?
- 反応物と生成物の化学式は何か?
を理解していなくてはいけないのですが、これは「酸と塩基」「酸化還元」「燃焼」など、個々の種類の反応について理解して説明できるようになると、丸暗記しなくても書けるようになってきます。なので、ここのページで出来るように覚える必要はありません。いろいろな種類の反応を学ぶときに書けるようになっていきましょう!
- 左辺(反応物)と、右辺(生成物)の、原子の個数を合わせる!
先ほど、化学反応式の大事なルールとして、原子(ピース)の組み立て方が変わっても、原子は消滅したり増えたりはしないので、反応物と生成物の原子の個数は等しくなる必要がある、ということに触れました。
そのため、反応物と生成物が何かわかったら、その中に含まれる原子の個数が等しくなるように、原子や分子、イオンの個数を調整する必要があるということです。
そのときに役に立つのが、「未定係数法」という方法です。
未定係数法で、各元素の原子の個数を合わせる
未定係数法と聞くと、名前からして難しそうに感じられるかもしれません。しかし、実際にしていることは非常に単純なことなので、安心して読んでください。笑
未定係数法では、各元素の原子の個数をそれぞれ合わせるという作業をしています。
化学反応の例
実際の化学反応式を用いて、未定係数法がどんなものか見ていきましょう。簡単な例として、金属アルミニウムと酸素の化学反応を例にします。
- 反応物を矢印の左辺に、生成物を矢印の右辺に、化学式で書く。
まずこの場合の反応物(材料)は、金属アルミニウムと酸素です。金属アルミニウムの単体の化学式はAl、酸素分子はO2となります。
そして、出来上がる生成物は酸化アルミニウムAl2O3となります。
この記事を読むだけでは、反応物と生成物の化学式がなぜこうなるかわからない方も多いと思います。もちろん書けるようになるべきなのですが、これは「燃焼反応」について詳しく知ることができれば、化学式が頭に浮かぶようになるので、暗記しなくても問題ありません!ここでは、既に反応物と生成物が解っている前提で話を進めます。
矢印の左辺に反応物を並べると、
Al + O2 →
となります。更に、矢印の右辺に生成物を並べると、
Al + O2 → Al2O3
となります。これで、反応の前後の物質が何か、コンパクトにまとめられました!
- 左辺(反応物)と、右辺(生成物)の、原子の個数を合わせる!
1.だけでは、両辺の原子の個数が異なっています。左辺はAl×1、O×2であるのに対し、右辺はAl×2、O×3です。
そのため、未定係数法を使って、反応物と生成物の個数を合わせていきます。
まず、基準となる物質を1つ決めます。ここでは、アルミニウムにしましょう。アルミニウムの個数をa個とします。
a Al + O2 → Al2O3
未定係数法では、他の物質の個数も未知数と置くので、一応O2の個数をb個、Al2O3の個数をc個としておきましょう。文字をおかなくても、原子の個数が合えばそれで良いのですが、文字としておくことで計算し忘れを防ぐことができますし、簡単な計算なので数式で表したほうがミスも減ると思います!
a Al + b O2 → c Al2O3
では原子の個数を実際に合わせていきましょう。
基準をアルミニウムの個数aと定めたので、まず両辺のアルミニウム原子の個数を比べます。
左辺はa個、右辺はAl2O3にAlが2個含まれているので、2×c=2c個です。
化学反応では原子は消滅したり増えたりしないので、この2つが等しくなります。
よって、a = 2c となります。
cについて解くと、c =\(\frac{1}{2}\)aとなるため、化学方程式は、
a Al + b O2 → \(\frac{1}{2}\)a Al2O3
と書き換えられます。この作業を、全ての元素の原子で行うことで、両辺の元素の原子の個数が全て等しくなります。
この場合は、酸素原子についても数を合わせる必要があるので、実際にやってみましょう。
左辺は、O2 にOが2個含まれているので2b個、右辺は Al2O3にOが3個含まれているので \(\frac{1}{2}\)a × 3 = \(\frac{3}{2}\)a個です。
bについて解くと、b = \(\frac{3}{4}\)a となるため、化学方程式は、
a Al + \(\frac{3}{4}\)a O2 → \(\frac{1}{2}\)a Al2O3
と書き換えられます。
あとは、全ての係数が整数になるように、両辺に文字を掛けたり割ったりすればOKです。数学の方程式と同じ要領ですね。この場合は両辺に4を掛けて、aで割れば、
4 Al + 3 O2 → 2 Al2O3
となり、全て整数の係数で、原子の個数に変化のない、ルールに沿った化学方程式の完成となります!
登場する物質の数が増えたとしても、各元素の原子の個数を1つずつ合わせていくことで化学方程式を書くことができます。面倒かもしれませんが、1個1個の作業は簡単なので大丈夫です!
上記内容は少々長くなりましたので、動画としてまとめてみました。よければご覧ください。
まとめ
- 化学反応とは、原子やイオンが結合を切ったり、新たな結合を作ることで、物質が別の物質に変化すること!
パートナーを捨てて、新たなパートナーと結合するので、物質の特徴も、エネルギーも大きく変化する。 - 化学反応式を見れば、反応前後の物質(反応物と生成物)、それぞれの物質粒子(原子、分子、イオン)の個数の関係がすぐわかる!
- 化学反応によって反応式の書き方に傾向があるので、
反応式の書き方に慣れれば、必要な化学反応の暗記量が一気に少なくなる! - 化学反応の前後で原子は消えたり増えたりしない!
そのため、反応物の合計の質量と生成物の合計の質量は等しい!(質量保存の法則) - 未定係数法は、反応前と反応後の、各元素の原子の数を合わせる方法!
1つ1つ原子の数を比べて合わせていこう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!